キーエンスでマネージャーとしての素地を築いた

これまでの経歴を教えてください

大学卒業後、キーエンスに入社し、特に厳しいことで有名な営業所に配属され、ビジネスパーソンとしての基礎を築きました。実力主義な社風のもとで、やりがいと責任はともに大きかったと思います。
とくに、ある1人の上司には本当にお世話になりました。キーエンスは徹底した合理主義で、営業時間中に利益に直接結び付かないことをしない文化があります。そんな中で、彼は私が悩んでいるときに、業務時間後、自分の仕事を行う大切な時間に何時間も相談にのってくれたんです。他にも「いついかなる時も判断軸がぶれない」「自分にも他人にも厳しく、妥協しない」「甘えは許さないが、成果はしっかり褒める」「仕事中は厳しいがオフでは人間味がある」など、自分にとってのマネジメントの基礎は、彼のもとで養われたと思います。

その後、なぜ転職を考えたのでしょうか?

転職を考えるきっかけになったのは、2011年の東日本大震災です。当時私は宮城の営業所に勤めており、惨状を目の当たりにし、人生観が大きく変わりました。自然の圧倒的な強さ、人間の無力さを実感し、残りの人生をどう生きるべきか考え始めたんです。
その後、たまたま経営大学院に通っていたのですが、そこには復興を人生の軸に掲げる中小企業の社長が多くいました。彼らはとても大変そうでしたが、非常にやりがいを持って生きているように見えたんです。また、同時期に東北楽天ゴールデンイーグルスで監督を務められていた星野仙一さんから、震災の2年後に日本一を成し遂げたお話を伺う機会があり、胸を揺さぶられました。
それまでは「有名になったキーエンスで活躍するのがかっこいい」と思っていました。しかし震災以降は、「いつ死ぬかわからないのに、このままでいいのか。自分も、社会のため人のために人生を使いたい」と考えるようになったんです。
キーエンスは、目標がどんどん上がり続けるので、チャレンジし続けられる楽しさがありました。マネジメントスタイルも複数の手法が求められ、成長実感がありました。しかし、改めて自分の人生を考えたときに、「自分と自分の家族だけでなく、貢献できる範囲を広げたい」と強く考えるようになった。それが転職を考え始めたきっかけです。

増田 直大

チームの変遷に応じて、仕組みを変えていった

なぜイタンジへ入社を決めたのでしょうか?

GAテクノロジーズグループには、キーエンスで一緒に仕事をしていたメンバーが入社したつながりで、以前から声をかけてもらっていました。GAテクノロジーズグループCEOの樋口さんとイタンジ前CEOの野口さんと話したときに、2人の「不動産業界を変えたい」という強い決意が非常に印象に残っていました。
1年以上誘っていただき真剣に考えたのですが、当時キーエンスで達成したい目標があり、お断りしました。その際に、「いつ目標が達成できるかわかりますか」と質問されたので「1年」と答えたんです。正直、1年経てばお互い忘れるだろうと思っていたのですが、本当に1年後に連絡をくれたので驚きました。そのときに「この人たちは本気で自分を誘ってくれているんだ」と感じ、GAグループへの転職を決めました。業界を変えるという非常に大きなチャレンジをするならここしかないと思ったので、他の選択肢は考えませんでした。

そこから、イタンジではどのような業務を行ってきたのでしょうか?

2019年にイタンジに入社し、セールス部門の責任者のほか、2022年からはGAtechnologies執行役員、現在は人事部門の責任者も担っています。入社当初の営業組織は、メンバーが個人でなんとかやろうとしている状態で、組織としては成立していませんでした。リーダーを立てたり、自分自身が現場に出て成果を出したり、失敗もある中、様々な試行錯誤を繰り返しました。
そして、マーケティング、インサイドセールス、営業、カスタマーサクセスという4つの組織で分業する「THE MODEL型」の仕組みを構築しました。「THE MODEL型」では、新規顧客を獲得し顧客満足度を上げるまでの流れを、スピード感を持って進めることができました。実際に、月に2件ほどしか成約できていなかった賃貸顧客管理システム「nomad cloud」の成約数を、組織変更後、月40件以上の成約数に繋げました。私のチームが初めて達成したことで、その頃から組織全体に「いける」という雰囲気ができました。
セールスは不思議なもので、無理だと思える目標も誰かが達成すると達成が続くことがあります。このときはまさにそうで、チームだけでなく会社全体での初達成につながりました。月次の締日の夜、20時半くらいに申込書を送っていただき会社全体で初達成したときは、社員全員で喜びました。本当に嬉しかったですね。個人、チーム、会社の達成という好循環がスタートしたのが2020年の夏頃です。

増田 直大

現在は「THE MODEL型」の体制が変わったそうですね

「THE MODEL型」にはメリットもありますが組織が急拡大する中で課題を感じるようになっていました。営業が成約をした後、カスタマーサクセスが実際の導入完了までクライアントの担当者とやり取りをしながらサポートしています。しかし、成約をした数と導入が完了した数に差があり、どこかで進捗が止まってしまっている案件が全体の10%ほどありました。さらに、メンバー数が急激に増加する中、ボードメンバーのみが意思決定をしていたため迅速な判断が難しく、権限移譲をしなければならない状況でした。
そこで、営業とカスタマーサクセスという役割は残しつつ、同じKPIを追うことができる 「Customer Focus制」の導入を行いました。「Customer Focus制」はマネージャーを頂点としたひとつのユニットに営業とカスタマーサクセスが所属しています。そこで、営業とカスタマーサクセス同士のコミュニケーションやディスカッションの活性化を狙います。
また、不動産業界は地域によって商習慣が変わることから、ナレッジが蓄積するようエリアでユニットを分けました。マネージャーはミニCEOのような役割を果たし、1つのユニットで小さな意思決定ができる体制にしました。これにより、以前よりお客様とスムーズに導入に向けた話し合いができるようになり、システム導入完了までにかかる日数が減りました。結果的に、「MRR(Monthly Recurring Revenue:月次経常収益)の見通しが早く立つようになりました。
また、個人的には、これからの人材はジェネラリストとして活躍できる方が価値が上がると考えています。営業は複数プロダクトを提案できなければいけませんし、カスタマーサクセスも、顧客に満足してもらうだけでなく、新しい提案をしていける存在であるべきです。営業とカスタマーサクセスのコミュニケーションが増えたと感じているので、1つのユニットで互いの仕事を学べる今の体制を活用してほしいです。

増田 直大

人材マーケットで、市場価値の高い人材を育てたい

今後、イタンジのメンバーに期待することを教えてください。

まず前提として、人材マーケットにおいて市場価値を高めてほしいと思っています。個人としてどう課題を設定し成長し続けるのか、という点にはこだわってほしいです。その上でイタンジの事業の成長と個人の成長が重なる部分があり、ここが両者にとってwin-winのポイントになります。
これには2つの要素を満たす必要があります。1つ目は、イタンジが市場で勝ち切ること。2つ目が、その理由が人材にあると思われることです。 イタンジが市場で勝ち切ることが、会社のためにも、個々人のためにもなります。この2つはどちらかではなく同時に成し遂げられるからこそ意味があるので、本気で目指しています。
上記が成し遂げられたことで、よりチャレンジングな挑戦ができる環境にしたいと考えています。これはイタンジ社内に限りません。例えばメンバーへのヘッドハンティングがあり、メンバーがイタンジか転職先か、どちらも選べる状態を作りたいです。そして、そのためにはイタンジも今よりももっと良い企業、良いチームでなければならないと考えています。
セールスやカスタマーサクセスという職種において、SaaS領域は非常に注目されており、人気も上がっています。イタンジでは、Buisness × Tech × Creative 全ての領域においてアウトプットを出し、手を挙げればさまざまな経験ができます。そのうえで、Real × Techが存在し、かつ急成長しているイタンジという環境の中で、ヒトにしかできないスキルを身につけ、自分のキャリアを切り開いてほしいと考えています。

増田 直大